リンゴと8ビート

さっき大学の時のサークルで共にドラムの練習をしていた友人と電話で音楽談義をしてとても楽しかった。
彼はリズムオタクといえるほどグルーヴの研究をしているのだけれど彼の口からはおよそ聞くことがないだろうと思っていた、ビートルズリンゴ・スターにはまっているという言葉に驚かされた。
リンゴのリズムには揺らぎがあることは私も認識していて、でもそれはリンゴのリズム感が危ういからだと思っていたのだけど、彼曰くリンゴのリズムは8分を3+3+2に分ける変拍子になっていたり、もっと複雑なので言うと3+3+3+4+3となっていたり、そしてそれがまたデタラメかといえばそうではなくて長い周期で規則性があるらしい。商業的な成功と芸術としての完成度はまた別だというexcuseを入れながらも彼はビートルズは売れるべくして売れたのだと思う、と語っていた。ビートルズについてはとかくメロディーから語られることの多いグループなのでリズムの複雑さからみた彼の分析は非常に新鮮だった。そして私が、じゃあリンゴはそれを意識していたのだろうか、と問うと、そうではなくてリンゴなりに気持ちのいいリズムを探求した結果経験的に身につけていったものなのではないかということだった。
この話の発端は、平均律やきれいな分数で表されるリズムに馴化されてしまった人間には民族音楽の旋律や拍子を再現するのが難しいよね、という話だったのだけれどよく考えたらクラシックの演奏家でもトップクラスの人はそういう枠組みから自由であることを考えると結局義務教育の必要以上な譜面至上主義教育が間違っているのかな、と思ったり。
というわけで微分音階を出せないピアノという楽器をやはり私は好きになれない。しかも最悪なことにたいていの親は自分の子どもにピアノを習わせることで音楽の楽しみの9割を奪っていることに気づいていない。
エンターテイメントとしての音楽の正体を少し探ることのできた貴重な時間だった。